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あなたのがん治療 本当に大丈夫?―セカンドオピニオンQ&A

はじめに、「効く」「効かない」という言葉で患者さんが誤解することも多い、抗がん剤の判断基準について教えてください。

南雲:
 「効く」ということの意味にはいろいろあって、みんな認識が違うんです。
効果にも4段階あって、「根治が可能」、それから、「根治は可能ではないけれども、延命は可能」、「延命も可能ではなく、ただ単に腫瘍が小さくなるだけ」それから、「全く効かない」、この4段階なんです。

 例えば、血液がんとか、精巣がんなどは、抗がん剤で根治が可能です。
また、乳がんや子宮頸がんは生存率の向上は可能です。
それから、生存率の向上も可能ではないけれども、しこりが小さくなって症状が緩和される、というようながんもたくさんある。
これらの抗がん剤の使用目的をきちんと把握することがまず必要です。

岩瀬:
 大事なことは、例えばすごく奏効率(がんが小さくなる率)が高い抗がん剤治療があって、それをフォローしていったら、奏効率が低い抗がん剤と生存率が変わらなかったという結果が出たりすんです。

 つまり、その目の前の腫瘍が小さくなったことと、どのくらい長く生きるかってことは必ずしもイコールじゃない。
患者さんに本当に必要なのは、どのくらい長く生きさせてもらうことができるかということのはずなんです。

嵯峨崎:
 やっぱり患者さんは「効いた」という言葉から、「治った、根治した」と思っちゃうんですよね。

岩瀬:
 医者もがんが縮小すると、延命っていうか、予後改善につながると信じてるからね。
でも、一番大事なのは生存期間です。
微小転移がなくならないと延命はしないから、目の前の腫瘍が少し縮小してもあまり関係ないんですよ。

吉田:
 小さくなって見えなくなったがんでも、ある時期にまた大きくなっちゃうと、結局、生存期間としては変わらない。
今までは医者の自己満足の世界で「効いた」「効かない」だったんですど、今は患者さん中心に医療を考えるべき時代なので、患者さんにとっては、どのくらい生存期間が伸びたかということが評価の対象になってきています。

岩瀬:
 患者さんの視点で効くかどうかを決めるんです、大事なのは。

吉田:
 抗がん剤を使うシチュエーションって2つしかないわけ。
1つは、手術後にその微小転移を根絶するために補助療法として使う場合。
手術のみに対する上乗せ効果が期待できるのは、乳がんと大腸がんくらいしか効果がない。

 それから、がんが再発したときに使う場合。
後者に関しては、延命効果があるか、緩和効果があるかが問われる。
だけど日本の医療現場では専門の腫瘍内科医がほとんどいず、外科がやっているせいもあり、これらをごちゃごちゃにして議論しているから患者さんも迷ってしまう。

 でも基本的には、補助療法に抗がん剤を使う場合、例えば再発性胃がんにおいて、すごく延命効果がないと、補助療法としての根治効果が出ないといわれてるんですよ。

 結果的に100万個のがん細胞をゼロにすることはできないということですよ。
だから、延命効果がはっきりしていない抗がん剤を手術後に使って生存率が上がった、上がらないというのはおかしな話ですよね。

岩瀬:
 実地医療では吉田さんの言う通りです。
しかし臨床医として正しくデザインされたものを実施することには賛成です。
そうしないと何が効果のある治療なのかわからない。


例えば、先生方が乳がんで術後、抗がん剤をやるときには患者さんにどういうご説明をなさるんですか?

吉田:
 例えば、50%の生存率が見こめるとすると、だいたい抗がん剤には約3割の再発抑制効果があります。

それは100人の人がいるとして、何もやらなくても50人の人が生きます、何もやらないと50人の人が死にますと。
でも抗がん剤をやったら15人の人が治る方に行きます。

 だから結局、全部で65人は治りますと。
でも50人は何もやらなくても治るし、35人は何をやっても残念ながら亡くなるのです。

 この事実をご納得した上で、意味があると思ったら受けてくださいということです。
 
 結局、補助療法の効果は5年、10年で何%の人が生きてるかっていう生存率でしか言えないんですよ。
一方で、患者さんにとっては0%か100%でしかない。最終的には「一人の人間の利益」まで言い表せないという限界があります。


セカンドオピニオン相談にも、抗がん剤治療に関する質問がすごく多いようですが、ちゃんと説明していない先生はどういう言い方をなさってるのでしょう?

南雲:
 ただ「効きます」、「やりましょう」って、簡単に。困ったことですよね。

 がんの治療で最近分かったことは何かというと、大きく取っても小さく取っても生存率はあまり変わらない。

 それから、手術でも放射線でも生存率はあまり変わらない。
ということは、どんなにすばらしい手術をしたところで、患者さんの生存率をそんなには変えることはできない。

 ところが、全身療法である抗がん剤、時にはホルモン療法も生存率を向上させることがわかっているので、手術は必要最小限にしましょう、または時には、放射線との組み合わせにしましょうということになっているのです。

 だけど、生存率を改善してくれる抗がん剤の補助療法にしてみても、全ての人に効くのかというと、今、吉田さんが言ったみたいに、大まかに言って3分の1の人にしか効かないんです。

 医者たちは今まで、「やらなきゃ死ぬよ、死んでもいいの?」みたいに平気で言ってきたのです。
でも実のところを言えば、やっても効かない人たちの方が多いんです。
そうした事実をきちんと主治医が説明していないことが一番大きな問題なんですよ。


実際の抗がん剤治療は病院により医師によりバラつきが多く、患者さんも悩んでいる訳ですが、外科とか内科の先生たちはどういう方法で抗がん剤の最新治療を勉強して取り入れてるんですか?

吉田:
 日本の臨床腫瘍部門のレベルは残念ながら低いと言わざるを得ません。
多くの医師たちは勉強してない。
5年、10年前の抗がん剤の治療が行われていることもあります。

南雲:
 時には国際的な標準治療とほど遠いのに、メーカーからの情報に頼って治療をしている人たちはすごく多いですよね。


そうすると、世界的なEBM(科学的根拠に基づく医療)にのっとった抗がん剤治療については、先生たちはどのような方法で勉強なさるんですか?

岩瀬:
 海外の医学HPや専門雑誌などです。
でも最新の情報は実際に海外の学会に行って、で初めてだよね。

吉田:
 アメリカでは、国立がん研究所(NCI)が出した医療者向けのPDQとナショナル・コンプリヘンシブ・キャンサー・ネットワーク(NCCN)が出してる情報が一応北米のガイドラインです。

 それに、プラスアルファ、日々出されている鍵となる論文があります。

岩瀬:
 そうですね。
でも、それを勉強してる日本の医者はものすごい少数です。
「抗がん剤治療は、日本人とアメリカ人は違うんだよ」、「薬の効きめも量も違うんだよ」などと、まことしやかなことを言う医者が多いのです。


抗がん剤治療のバラつきを、今後是正するには、どのようなことがあり得るのでしょうか? 
抗がん剤の専門医の認定やガイドライン化の動きもあるようですが……。

南雲:
 簡単だよ、
訴訟を起こせばいいんだよ。
世界的な標準治療を受けなかったために死亡しましたって。

嵯峨崎:
 やっぱり、求めていく人には情報は集まっていくんですよ。
間違った方向に求めていく人は別として、例えばキャンサーネット・ジャパンのホームページを見てセカンドオピニオン外来に来る人っていうのは、それなりに情報を得られるんです。

 だから、求める者どうしはより合うんだけれども、明後日の方向に行っ
て走っちゃうような患者さんっていうのは、現状では私たちにもどうしようもできない。

岩瀬:
 患者さんが本気で情報を集めて標準治療というものを知ったら、おかしなこと言ったりやったりしている病院には恐くて行けないよね。

南雲:
 だからこそ、セカンドオピニオンを受けてもらえば、医師によって、医療施設によってさまざまな治療方針があるということに気づくんですよ。

吉田:
 訴訟になった場合、医療者はその時点での医療水準を提示したかどうかが問われます。
その医療水準というのは、その時点での標準治療を指すので、それを提示せず、標準的な治療を行わなかった場合は、裁判でも医療側が負けるんですよ。


さらに、日本ではアメリカとちがって腫瘍内科医が少ない理由は何なのでしょう?

吉田:
 お金にならないから。
日本では手術のように技術料が設定されていない。
リンパ腫をあつかう講座はあるが、固形がんに対して抗がん剤治療を専門にする臨床腫瘍部などの部署がない。
つまり、腫瘍内科学を系統的に教育するシステムがないのです。

岩瀬:
 日本では、外科医が、メインの手術の片手間に、できるようになっているんです。
ですから国際標準というよりも、自分が安心してできる抗がん剤治療を選択する傾向にあります。

 これは正しい医療とは言えないでしょう。
標準治療はどんどん変わっているわけだし、副作用対策だって研究が進んでいく。
外科が抗がん剤治療を専門にするのは非常に難しいと、私は思います。

南雲:
 うちの病院では、僕のパートナーの岩瀬さんが抗がん剤窓口を開いています。
30分の予定が、時には1時間半も相談しているけど、患者さんたちが本当に心から自分の病態のことを理解して喜んでる。
それだけで、こちらは満足なんです。それで、必要な場合には、医療コーディネーターの嵯峨崎崎さんのところに紹介している。
こういう他との医療連携はいままでなかったのです。

嵯峨崎:
 医者が1人ではなかなか抱えこめない問題も多いですから、医療者同士の人間関係やネットワークこそが大事なんですよ。

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